不二家を食べながら「権利はなぜ守るべきなのか」について考えてみた

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不二家といえば、いちごのショートケーキというイメージですが、
「ミルキーロールケーキ」という商品があり、これが結構美味しいので
社内でも定期的に購入したり贈答でもっていったりとしています。

https://www.fujiya-peko.co.jp/cake/item/10533.html

洋菓子の不二家だった子ども時代

不二家といえば、洋菓子、ペコちゃんのイメージで、
40年近く前まで「ハレの日」は、不二家のショートケーキというのが
どこの過程でも、ほぼ定番としっても過言ではありませんでした。

ショートケーキという存在を誕生させたのも「不二家」ですね。

今でも、やっぱりあの味を食べると、
他のどんなオシャレなケーキよりも、安心できるようなホッとする気がします。

不二家黄金時代

不二家は1910年(明治43年)に横浜で誕生します。
時代は、第一次世界大戦が開戦する4年前ですね。

当時の横浜は、1860円に横浜港を開港して以来、外国人居留地ができはじめており、
インターナショナルスクールなども開校し、多くの外国人が居住していました。

そこへ、藤井林右衛門氏が25歳という若さで、横浜市中区元町に1号店をオープン。

その後、どんどんと拡大し、日本の食卓の洋菓子の第一線に躍り出てから、
1951年、主力商品になる「ミルキー」を発売。
洋菓子事業と菓子事業の2本柱で、菓子業界に不動の地位を気付きました。

身近な商品としてはミルキー、カントリーマアム、ネクター、ホームパイなど大ヒット商品を連発、日本の食卓にはかかせない菓子を製造するメーカーとなりました。

不二家の凋落

しかし、2007年、不二家は洋菓子を製造過程で賞味期限切れの材料を流用していたことが発覚し、洋菓子店全店休業し販売を休止する自体になりました。

発覚後、山崎製パンと資本業務提携を経て、1年半後には山崎製パンの連結子会社となりました。2007年当時、TBSテレビの情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』において不二家捏造問題が起きたことも、覚えている人もいると思います。

というより、あれが捏造された情報だったとは、今でも気付いていない人も多いと思います。

その後も、時代の流れとして、ケーキが昔よりも一般的になってしまったことや、コンビニやスーパーなどで手軽に安いショートケーキがいつでも食べられるようになってしまったことなど、不二家にとっては、とてもつよい向かい風が起きたことで、このあと10年以上赤字が続いています。

さらに、今年起きたコロナ騒動で外食需要の激減とともに、買い控えが起き、さらに大きなダメージをうけています。年間150店舗以上のお店が閉店となっている現状は、子どもの頃、憧れだったあの不二家を思うと、悲しく寂しい気持ちでしかありません。

今後、不二家の復活を祈りつつ、ロールケーキを書い続けます。

※ショートケーキは苦手なんです・・・。

ペコちゃん盗用疑惑

ペコちゃん、ポコちゃんといえば、
不二家のイメージキャラクターとして知らない人はいないですね。

不二家は知らないけど、ペコちゃんは知ってる子どももいるくらいです。

そんなペコちゃん、実は盗用疑惑があります。

引用元:スペイン一の不良娘/MAÑANA(旧バレンシア留学日記)

これ、スペインの「Miss Palomita(ミス・パロミータ)」という会社のキャラクターです。
ちょっとはじけちゃった感じのペコちゃんですが、日本人がこのキャラクターをみて

「あ、ペコちゃん!」って思わないわけがないと思います。

ミス・パロミータが不二家をパクったのか、不二家がミス・パロミータをパクったのか、
定かではありません。ブログ元では、パロミータの方が創業が古いので、不二家がパクったに決まっていると言っていますが、創業当時からこのキャラクターを使っているという証拠もありません。

結論的には、スペインのCHURRUCA社がパクったのですが、
「洗練された感じのデザインを日本人ができるわけない!」という自虐的な人は
日本人がパクったと思ってしまうのかもしれません。

結論はさておき、

wiklpediaではこう書いてあります。

戦前から出していた「フランスキャラメル」のパッケージにリアルな外国の少女のキャラクターを使用していたが、「ミルキー」は「フランスキャラメル」よりも対象年齢を低く設定していたため、単純で分かりやすいデザインを志向した結果生まれたのがペコちゃんだった[8]。一方でペコちゃんよりも先に存在していた、アメリカのゼネラルフーズ社のオレンジジュース「バーズアイ(英語版)」のキャラクター「メリーちゃん」(Merry)とデザインが酷似していることも知られている。

こうあるとおり、スペインのCHURRUCA社のミス・パロミータからパクったというようには記載がありません。どちらかといえば、米国バーズアイ社のキャラクターである「メリーちゃん」からパクった可能性があります。

メリーちゃんのイラスト
1949 Birds Eye orange juice cartoon girl

1955年当時の動くペコちゃん人形

ミス・パロミータの創業が1932年、当時からペコちゃん風のものをつかっていたとすると、この時すでに似ているはずですが、そのような記録もありません。

現在も、使用をしているようで、使用に関して、弁護士を通して交渉を行っているようです。しかし不二家自体、スペインに出店しているわけでもなく相手も老舗だということもあり、交渉は難航しているようです。

デザインの商標について

はい、不二家のロールケーキから歴史、ペコちゃんまで引っ張って、

「何が言いたいねん!」

というところですが、結論、ここが言いたいんです。

商標というのは、理屈で語れるほど単純なものではない。

商標とは、wikiでは、

商品や役務を提供される需要者に、提供者を伝達する標識。本記事はおもに商取引上の意味を記す。

と記載されています。

つまり、トレードマークと呼ばれるようなもので、そのデザインのマークを見ることで、その商品であったりサービスなどを認知できるものということです。

唯一無二でなくてはならず、商品やサービスのイメージの向上を図る意味でも、また毀損することを防止する意味でも、保護されなければなりません。

しかし国際化の世の中において、この「保護」される範囲は、基本的には国内に限られてしまいます。マドリッド協定議定書では、国際出願で保護を求めることもできるとありますが、実際は、各国でのそのメーカーやサービスの歴史、認知度などがあり、そのまま国際的に一方だけを有利にするように保護されるといったことは、少ないです。

理不尽ではありますが、CHURRUCA社がゴネ通せば、不二家はミス・パロミータの商標権を、CHURRUCA社から買取る必要があり、その可能性はCHURRUCA社が以前に、712万ユーロというとんでもない金額を払ってまで商標権を取り戻すことに使った経緯を見てもわかります。

補聴器のアイホンと富士通のiPad

商標登録といえば、Appleの製品で有名な、iPhone。

実は、日本で先に商標登録されていたため、Apple社が日本企業に対して商標使用料として約1億円を支払っています。
その上で、アイホン社の製品であるテレビドアホンの「アイホン」と混同されにくいようにApple社のiPhoneのカタカナ表記は「アイフォーン」となっています。
これは、アイホン社との合意に基づいて契約で決められています。

iPadも、同様で、実は富士通のアメリカ法人が2003年3月に商標登録していた商標でしたが、
2010年、AppleはiPadの発売にあたって、富士通から事前に商標の購入を進めていました。

金額などは明らかにされておらず公表もできないと、発表されています。

形のないものだから「権利」という形に

商標権、著作権、肖像権・・・すべて権利という名称はありますが、形はありません。

音楽や映画、弊社で行っているデザインなどの著作物も、製作者に「著作権」という権利があります。

今ではあまり言われることも少なくなりましたが、創業当時は、

「デザインのデータなんか形がないのに何で金がかかるの?」
「パソコンでちょちょっとつくったもんでしょ?」
「提出した原稿は自分で考えた。デザインしかしていないのに著作権なんかおかしい」

こういうふうに言われて、デザインデータの譲渡にあたって権利の譲渡に費用がかかることを説明するのに苦労しました。納得されず勝手に流用されることも、ありました。

不二家という大きな会社ですら、権利を守ることにこれだけ苦労していることを考えると、我々のような零細というのも烏滸がましいほどの企業であれば、言わずもがなでしょう。

しかし、日本の誰もがしっているiPhoneですら、ほぼ一部の業者しかしらないアイホンの商標権をきちんとたてて使用料を支払って権利を守っているのです。

どのような権利であれ、守られなければそれを作成した人、考案した人の意思や意図、苦労もすべてが水泡に帰すことになります。

そういう意味でも、形のないものこそ、「権利」という形にして守ることが大切なのではないでしょうか。