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権利という言葉を辞書で調べてみますとこうでてきます。
ある物事を自分の意志によって自由に行ったり、他人に要求したりすることのできる資格・能力。または一定の利益を自分のために主張し、また、これを享受することができる法律上の能力。
つまり、他者に対して、自分の行為だったり利益だったりを主張・要求できる能力を指します。
我々が、制作したデザインのデータにはすべて「著作権」が存在しています。
お客様がそのデータを流用したり、改変する場合、その権利を購入していただいています。
なぜそのようなことをしているのか、と版権とは何なのかについても説明をしていきます。
デザインデータを購入してもらっている理由
デザインデータに権利があるか、ないかを問われたとき
「デザインのデータなんかに権利なんかあるわけないだろ」という人は、
今では、もう少数派です。絶滅危惧種と言っても過言ではなく、危惧すら必要もないほど非常識であると言えます。それは置いておいて・・・。
なぜ、購入してもらっているかを説明します。
データをお客様ご自身で編集・改変が可能な場合、刷り直し(追加での印刷)にあたって、和たちたちに許可をとっていただいた上で、データ自体を「貸与」することで、改変や編集してもらうことも物理的には可能です。この場合、譲渡していませんので貸与の費用くらいしかかかりません。
デザインの編集にあたって費用を抑えたいというお気持ちもよくわかりますので
貸与で済むならそうしたいというお気持ちもよくわかります。
しかし、貸与であれ、編集を行うにあたって、
一度、編集用の元データを、お客様にお渡しする必要があります。
データの性質上、複製することはいたって容易です。
お渡ししたデータが単に編集しかされずに、複製されることなく戻ってきたかどうかを、私たちが確認できる術はありません。複製されたものを、改変し、別の形で流用されることになった場合、弊社としては止める手段も現実的にはありません。
そこで、編集が可能な「元データ」に関しては、貸与ではなく、譲渡するという形にしてしまい、その後、いくらでも複製ができるような権利関係にして譲渡することで、後々のトラブルを回避することが大きな理由です。
版権とは?

私たちは、デザインデータを譲渡する際の費用を「版権譲渡料」と呼んでいます。
この「版権」とは一体何の権利なんですか?という質問をよくもらいます。
狭義では「著作権」とは意味合いが異なりますが、現代の法律用語でいう広義での「著作権」のことを「版権」と呼んでいます。
版権の歴史
版権はもともと、福沢諭吉は英語の「copyright」を翻訳する際に「出版の特権」という意味で版権という言葉を用いました。その際、このように東京府に対してのべています。
著者に専売の利を帰せざれば力を費して書を著す者なし。世に著書なければ文明の以て進む可き路なし。
つまり、著作権者の権利を認めないと、パクったもん勝ちになって誰も作らないよということでしょう。
福沢諭吉の「版権」という権利が日本で認められる以前は、版権という権利についての感覚は日本ではなかったようです。
なぜなら、そもそも出版するにあたっては「木版」という「版」が物理的に存在し、その版自体が財産的な価値を有していたため、版木がなければ複製することができないため、形のないものをまもる権利として存在する理由そのものがなかったからである。
しかし、明治以降、金属の活版が誕生するや、出版する「版」そのものではなく、その版の内容を作成した「著作者」に価値が移行していきました。
その後、明治32年に「著作権法」という法律が制定されて版権は著作権という用語で、著作者の権利として法的にも定義されるところとなりました。
版権という言葉自体は、すでに100年以上まえから法律用語ではなくなっているのですが、未だに知的財産権のことを「版権」と呼ぶ慣習があります。そういった意味で、私たちも「版権」という表現を使用しています。
実は、著作権には2つ性質がある
著作権には実は、2つの性質があります。
それは、「人格権」と「財産権」です。
人格権とは、著作者の利益を保護するための権利、つまり「著作者人格権」
財産権とは、財産的な利益を保護するための権利、つまり「著作物財産権」
とも呼べます。
著作者人格権について
著作者、つまり創作物を作り出した人だけがもっている権利です。
音楽であれ、絵や出版物であれ、その著作物を、一次的に創作したものだけがもっている権利ですので、相続することも譲渡することもできません。
これは普遍的なもので、どこかに登録しなくても著作した瞬間から権利が発生し、著作者が死亡するによって消滅しますが、実際は、一定の期間は法律によって保護されます。
この著作者人格権は、著作物でを公表することや提供することができる公表権という権利が認められており、二次的著作物であっても可能です。また、その氏名を公表する、またはしないことを決める権限も認められています。
実名である必要はなく所謂ペンネームでも、同様に権利は認められるとされています。
また、同一性の保持といって、著作者である自分自身の意に反し、勝手に変更や削除などされる改変・編集を行われない権利も認められています。
つまり
自分でつくったものを他人が勝手に公開したり、自分がつくったと詐称されたり
勝手に変更加筆されない権利があるということです。
著作物財産権について
前者と違い、この権利は、財産的な利益を保護する目的がありますので、譲渡や相続が可能です。権利の一部または全部を、他人に譲渡できますので権利を譲り受けたものがその権利を行使することが可能です。
もちろん、著作者本人にもこの財産権は認められていますが、著作者本人でしか持ち得ない権利ではなく、譲渡・相続など「継承できる権利」ですので、それを目的に様々な権利が認められています。
例えば
譲渡権はまさにそうで、権利を譲渡することができる権利です。
貸与権、二次著作物の利用権、頒布権などで権利を保有していない人がどのように使うことができるのかも決めることができる権限も認められています。
つまり、著作物を財産として活用していく上で必要になる権利ということです。
著作者とは何なのか?
著作者については、著作権法第二条に「著作物を創作したもの」と規定されています。
しかし、複数の人間や法人が著作した場合は、また少し意味がかわり、複数で著作した場合は全員で1つの著作者となります。法人でも同じくです。
法人の場合、法によって人格をもっているだけですので、実際に人間ではありません。
中で実際に著作した者がいますので、そこには規定が必要になります。
そこで法律では、法人を著作者と呼ぶために、下記の規定のうち3つは該当する必要があるとしています。
●法人等の発意に基づくものであること
●法人等の業務に従事する者が職務上作成するものであること
●法人等が自己の名義で公表するものであること
●作成時の契約、勤務規則に別段の定めがないこと
著作権を正しくしって正しく活用
形がないものに権限を与えるが権利だと解釈しています。
著作権という言葉は知っているけど、よくわからないから、ま、いっか。ということではなく、著作権について正しい知識をもって、正しく活用していきましょう。
思わぬ思い込みから、著作権を侵害してしまい、とんでもないトラブルになってしまうこともあります。自分の権利を大切にしたければ、他人の著作権も大切にするようにしましょう。